▼Blackview Bl5000
Blackviewの「BL5000」は、防水防塵と高い堅牢性を誇りながら、ゲーミング向けを謳うスマートフォンである。今回、直販で1台購入したので、簡単に試用レポートをお届けしたい。
Blackviewといえば中華スマホの一角をなすメーカーで、特に高堅牢性モデルを多数リリースしている。その中でBL5000は、その堅牢性という特徴を維持しながら「ゲーミング」を謳うモデルである。
今やゲーミングスマホやゲーミングPCは珍しくないが、高堅牢性と両立させたモデルはほとんどない。BL5000はいわばパナソニックの「TOUGHBOOK」やデルの「Rugged Extreme」シリーズがゲーミングを謳っているレベルのようなものである。
こうした堅牢デバイスは一般的に、風雨にさらされるような工事現場や、野外活動に適したもので、家といった屋内でやることが前提ゲームとは相反する要素にある。しかしモバイル回線やプロセッサの高速化により、シーン問わずゲームをするということは「可能」になってきており、BL5000はその構想を商品化したものと言える。
スペックはミドルレンジだが堅牢スマホらしさは控えめ!
BL5000は、心臓にあたるプロセッサにDimensity 700を搭載し、メモリ8GB、ストレージは128GBと、ミドルレンジ級のスペックを備えたモデルである。「原神」といった高度な3Dグラフィックスを実現したゲームには向かないが、「ウマ娘」や「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」程度のゲームならプレイできる実力は備わっている。Dimensity 700搭載から分かる通り、モバイル通信は5Gに対応するのもトピックだ。
▼5G対応のDimensity 700搭載でミドルレンジクラスの性能
堅牢スマホで5G対応、なおかつゲーミングと謳われていることから、ちょっとグラっときてしまってポチッと注文してしまったのである。いや、むしろUlefone「Armor 11T」の厚みに落胆しすぎてイラッと来たというのもある。普段持ち歩いて使うにはちょっと恥ずかしいし、気が重いからだ。
BL5000も厚みに関しては心配していたが、届いてからちょっと安心した。ケース付きのROG Phone 5 Ultimateよりわずかに厚い程度だった。また、画面の枠も堅牢スマホとしては薄く大型。ついでに言えば解像度も1,080×2,300ドットの6.36型で一回り大きく高精細なので、普段使ってる他の現代的なスマホとほぼ同じ雰囲気で使える。
▼Armor 11Tより一回り画面が大きく狭額縁。その一方で薄く、普段遣いしやすい
それ以外これといって取り立てて特徴的な機能はないのだが、強いて言うならヒートパイプ内蔵で熱対策がしっかりなされている点と、NFCに対応している点、ソニーIMX362センサーを採用したメインカメラ、30Wの急速充電に対応し、充電しながらでも横持ちゲームがプレイしやすいL字型充電ケーブルの付属が特徴、といったところだろうか。
▼製品パッケージはシンプルなホワイト。角が潰れているのは中華製品のご愛嬌
▼付属品など
Blackview BL5000の主な仕様:
プロセッサ | MediaTek Demensity 700(Cortex-A76×2、Cortex-A55×6、Mali-G57 MC2) |
メモリ | LPDDR4x 8GB |
ストレージ | UFS 2.2 128GB |
ディスプレイ | 1,080×2,300ドット6.36インチIPS |
OS | Android 11 |
カメラ | 1,200万画素/F1.75メイン(IMX362-AAQH5-C)、1,600万画素広角(S5K3P9SN)、51,600万画素前面(S5K3P9SP04-FGX9) |
ネットワーク | 5G/4G/3G/2G、IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 5.0 |
インターフェース | USB 2.0 Type-C、指紋センサー |
その他機能 | NFC、IP68防水、IP69K防水 |
本体サイズ | 80.4×164×12.8mm |
本体重量 | 273g |
Black Shark 3そっくりな筐体。薄型大画面で快適
本体のデザインは、Xiaomi傘下の「Black Shark 3」をほぼ踏襲したもの。カメラが3眼で逆三角形に並んでいること、下部にも三角形のデザインが入っている点、横のストライプデザインなど、一見したらBlack Shark 3そのものだ。
本機には滑り止めのようなパターンがあるほか、オレンジと緑のアクセントラインが入ったオプションがあり、今回購入したモデルはオレンジなので、ある程度は差別化されているのだが、ブラックモデルだと、遠目に見たらBlack Shark 3だろう。
▼デザインはBlack Shark 3そのもの
堅牢スマホらしくUSB Type-C端子の防水キャップがついているのもいい。Armor 11Tはむき出しであり、たとえ防水だと謳われていてもやや心配になるが、本機はその心配は無用だろう(とは言え、Armor 11Tは無接点充電があるため一概に本機が便利だとは言えない)。ちなみに本機はSIMカードスロットにも防水キャップがあり、防水防塵対策は万全のように見える。
▼USB Type-CにもSIMカードスロットにも防水キャップがある
先述の通り、Armor 11Tと比べるとだいぶ薄く、画面も大きく高精細。パネルはAUOのIPSの「NT36675H-DP/3UB」が使われている。随分と普通のスマホの感覚で扱えると思う。前面カメラはパンチホールでこれもトレンドをしっかり押さえている。
▼見やすい6.36型のIPS液晶を搭載。激しい動きのゲームでは残像がやや気になるが、1,080×2,300ドットの高精細で美しい
また、指紋センサーは電源ボタンと一体型のため、迷うことなくロック解除できるのがいい。反応も上々でArmor 11Tより軍配が上がる。ただ、現時点ではなぜか指紋センサーに指が触れていると、Chromeにおいて慣性スクロールが効かなくなり、持ち直す必要が生じてしまうのがネックだった。
▼右側面に音量ボタンと電源ボタン。電源ボタンは指紋センサーを兼ねている
▼左側面はSIMスロットのみ
残念ながらゲーミング向け要素は「ほとんどゼロ」
本機でもっとも残念なのが「ゲーミング要素」がほとんどない点である。正確には、ゲームの起動を行なうゲームランチャーが実装されていて、ゲーム起動中はメッセージのポップアップや電話を拒否する機能はあるのだが、その程度である。ゲーミング要素を求めて購入したらかなりガッカリすると思う。
▼ゲーム中に着信拒否や通知ブロック設定ができる
▼5本のゲームがプリインストールされている
まずゲーミング要素の筆頭として挙げられる背面にあるRGB LEDだが、筆者が試してみた限りでは、ゲーム中は光らず、画面を切ってサスペンドに入ると呼吸エフェクトで光るだけである。しかも色は一切カスタマイズできず、紫と緑に発光するだけのシロモノだった。正直意味がわからない。しかもNFCのロゴなので、余計意味がわからない……。
▼画面オフのときに呼吸エフェクトで点滅するNFCのロゴ。ゲームプレイ時は光らない
▼設定でマーキーを設定できるが……ゲーム時に光らせるといった設定はない
また「1217スーパーリニアスピーカーと0.9cc級スピーカーチャンバー」の採用による音の体験も謳われているが、本機は縦持ち時底面側にしかスピーカーが備わっておらず、よって横持ちをする際はモノラルとなる。音質自体は確かに頑張っている方だが、「イマーシブサウンド」かどうか聞かれたら否だろう。絵はステレオだが、ステレオの文字はどこにもない。
▼横持ち時にステレオになるのように見える公式イメージ
▼実際は下部にしかスピーカーを備えていない
▼上部にはスピーカーがない
さらに製品ページにある写真、さもショルダーボタンを備えているように見えるのだが、実際は何も装備されていない。もっとも、この写真の説明は「最新のDoke OS 2.1の採用により最高のモバイルとゲーミング機能を組み合わせ、プロフェッショナルなゲーミング体験を提供」なので、ちゃんと読まずに絵だけみて判断する俺がバカだった、としか言いようがない。
▼L/Rショルダーボタンがあるように見えるが、実際にはなにもなし
よって、ゲーミングスマホらしさはヒートパイプの採用による温度低下、という程度になってしまう。ただ、今どき当たり前の実装だし、Dimensity 700自体の発熱はそこまで高くない印象で、ゲームプレイ中熱が気になることもなかった。あまりメリットが感じられないかもしれない。
▼ヒートパイプ採用で最大7℃の低下が謳われいる
英文の説明を読めばイメージとはあまり関係ないことがわかるのだが、買う前にちゃんとその説明を読まず絵で理解した俺が悪かった。Blackviewのような中堅スマホメーカーがどこまでゲームに力を入れるのか期待したのがそもそも間違いだった。もう捨てたい。
ほぼピュアなAndroid。カメラ性能は悪くない
OSはDoke OS 2.1などと謳われているが、ほぼ素のAndroid 11で、特殊なカスタマイズもほとんどない。強いて言えば、先述のゲームランチャー(名前はゲームモード)、およびゲームやゲーム体験版が5種類、WPS Office、Operaブラウザがプリインストールされていることだ。
ローカライズはほとんど済んでおり、Armor 11Tのように中途半端に英語が残っているところは少ない。ジェスチャー操作にも対応しており、メインのスマホとほとんど遜色なく操作できることだろう。
▼ほぼ素のAndroid 11を搭載
カメラは、背面が125度/S5K3P9SNセンサー採用の1,600万画素の超広角カメラ、IMX362センサー採用で1,200万画素のメインカメラの2つ。もう1つについては記述がなく、おそらくダミーである(本当にBlack Shark 3に似せたかっただけ)。前面カメラは「S5K3P9SP04-FGX9」で1,600万画素。
メインカメラは閉ループAFとDPAFによる高速性が謳われているが、筆者の印象では至って普通。Armor 11TのようにタップしてからAF動作するまでのラグがないので普段遣いはしやすいが、0.1秒でAFが合うといったような高速性はなく、0.5秒から1秒ぐらい待たされる。
なお、画質はこれといって特筆すべき点はなく、屋外なら可もなく不可もなしといったところ。一方屋内は手ブレがないからか、めっぽう弱い印象だ。まあカメラ性能に期待をして本機を購入するユーザーもいないだろうが、屋外ではピンぼけすることなく普通の写真が撮影できるレベル、屋内は弱いため料理の撮影には向かないといったところだ。
▼標準カメラ作例
▼広角カメラ作例
性能はミドルレンジの域を出ず。ウマ娘ならサクサク
Dimensity 700搭載なのであまり性能は期待できないが、テストをしてみたところAntutu 9.1.2で362,795という結果だった。これはなんと以前レビューしたArmor 11Tと同等である。GPUのスコアは3万ほど低く、その代わりMEMとUXのスコアが高く、それで補っている結果。
▼Antutu Benchmarkは362,795とDimensity 800並みだが、GPU性能がやや低い
なので、一般的な利用はDimensity 800とほぼ同等の快適性を実現していると言ってもいいだろう。一応軽いゲームはプレイできるが、高度な3Dゲームは期待できないといったレベルである。
ゲーミングということで、まずは比較的軽量な「ウマ娘」をプレイしてみたが、こちらは画質「標準」で全くストレスなく進行できた。読み込みもかなり高速で、Snapdragon 888端末と遜色ない。強いて言えばIPS液晶なので残像が少し気になる程度である。
▼ウマ娘は快適にプレイ可能。強いて言えばIPS液晶なので残像が気になる
その一方で公式のスクリーンショットにも使われている「原神」はやっぱり少し荷が重い印象で、デフォルトでは「最低」の画質プリセットがセットされてしまった。1080p解像度であるため、レンダリング精度のみ「高」に設定すればグラフィックスの精細感はArmor 11Tを上回るが、フレームレートは30fpsが精一杯だ。
▼原神は最低がデフォルト。レンダリング精度だけ高にすると良い
その一方でMOBAの「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」は、60fpsながら普通にプレイできる印象だった。
リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフトは60fpsで快適にプレイ可能。さすがに90fpsや120fpsオプションは選べない
なお、原神プレイ中の発熱はカメラ部がちょっと熱くなる程度で、フレーム部はあまり感じられなかった。この辺りはDimensity 700の低発熱とヒートパイプを組み合わせただけのことはある。
あくまでも扱いやすい堅牢スマホ
Blackview BL5000のメリットとデメリットをまとめると以下の通り。
メリット
- 3万円台で5G対応、しかも堅牢
- 薄型で普通のスマホ+やや重い程度の感覚で持ち運べる
- フル画面でコンパクトな筐体、モダンなデザイン
- Dimensity 700で大半の利用シーンは満足
- 熱くならない筐体
- キャップ付きのUSB Type-CとSIMカードスロットで防水防塵は完璧
- Dimensity 800と遜色ない一般性能
デメリット
- ゲームと言うにはやや弱い性能
- RGB LEDは実質無意味
- スピーカーがモノラル
- L/Rショルダーボタンなし
- Black Shark 3のパクリ
- (本体とは関係ないが)公式ページの写真が不親切
- 事実上ゲーム向けフィーチャーはゼロ
質実剛健な堅牢設計や、派手すぎないデザイン、堅牢スマホとしては比較的薄く軽い。そして5G対応で一般性能も悪くなく、ほとんどのメインストリームゲームがプレイできるということを踏まえると、アウトドアや現場で通常のスマホ代わりに使う安心できるスマホとしては頼れる製品だ。
その一方でBL5000をゲーミングスマホとして買うと、超絶肩透かしを食らうのは間違いない。もちろん、ゲーミングの定義は人それぞれだろうし、リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフトやウマ娘のようなゲームが問題なくプレイできていることを考えると、「お風呂に浸かりながらゲームをまったりプレイする」という用途は満たせるとは思うが、他社の最新鋭ゲーミングスマホと比較するとかなり見劣りする。とは言え、3万円台の堅牢スマホとしてみればコストパフォーマンスに優れており、Helio P60端末からのステップアップにはちょうどいいのではないだろうか。
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